2006年9月 9日 (土)

「AED」で生存率5倍=救急処置効果で初調査-総務省消防庁

 昨日のブログはなんだったのだろうという、私の日頃の疑問に一歩踏み込んでくれる。
 
 しかし、これも「救急隊や市民によって」と丸められているのが、どうもなあですね。救急隊の方が圧倒的に多いのではないかと思いますし、そうなると、あのAEDの費用便益は…という昨日の話に逆戻りです。救急隊の行う除細動と、一般の人の行う除細動は、同じ除細動でもresourse allocationから全く違うわけですから。
 記事書く方々頑張ってください。勉強しろというのじゃなくて、日頃の疑問を大事にすることだと思います。

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 心臓疾患で心停止した急病人に自動体外式除細動器(AED)などで電気ショックを与え、心臓の動きを回復させる救急処置が行われた場合の生存率が、行われなかった場合に比べて5倍高いことが7日、総務省消防庁の調査で分かった。
 調査は、心肺停止傷病者の救急搬送時などのデータを基に、救急処置の効果を初めて分析した。それによると、2005年中の心臓疾患による心肺停止症例で、救急隊や市民によって除細動が行われた例は約4800件。そのうち1カ月後に生存していたのは17.5%に上る約840件で、除細動が行われなかったケース(3.5%)を大きく上回った。 
(時事通信) - 9月8日6時3分更新

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2006年9月 8日 (金)

<心肺停止>応急手当ての患者は高い生存率 消防庁調査

 あっという間にあらゆるところで見るようになった自動除細動器ですが(少なくとも東京では)、使われれば確実にめざましく救命効果が高いものの、実際使われることはどれだけあるのだろうかと思っております。少なくとも、医療経済学的にいうと、明らかに費用便益分析で却下されるのではないかと。
 そう日頃思っている私ですから、この記事を見たとき、なんだ、ちゃんとデータとっているじゃないの、と一瞬思いました。しかしながら、この記事、年間何件一般市民による救命があったのかも分からないし、しかも「一般市民からの応急手当」が何を指すのかも分からない、例によって困った記事でした。除細動器によるものなのか、それとも消防がやっている市民教育を受けた人によるものなのか(少なくとも除細動器を使用したケースのみだと、1.4倍というのは低すぎだと思いますが…)。こういうことを明確にしないと、限られたお金で何をやることがより効果的かということが分からないわけですから、発表する側も報道する側も、人口減少社会に向けてもう少し自覚的になっていただきたいところだと思います。

 ちなみに、NPO法人AED普及協会というのがありまして、ここに、自動除細動器の設置場所が示してあります。あれ?東京でまだ80か所なんですね。わが故郷広島ではまだ11か所でした。
 医療経済学的に言うと、小中学校に設置するのが良いような気がするのですが、どうでしょう。そういう分析をもとに、設置場所の優先順位を決めるべきと思いますが、どうでしょうか。

 除細動のことがなんだか分からなかった方、以前、映画のブログで除細動について書いたので、ご参考まで。この映画、若き日の売れないキーファサザーランド主演だったのです。twentyfourでのエミー賞おめでとうございました。

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 昨年1年間、心臓疾患による心肺停止状態で救急搬送された患者のうち、心肺停止の時点で一般市民から応急手当てを受けた患者の1カ月後生存率は手当てしなかった場合より1.4倍高かったことが7日、総務省消防庁の調査で分かった。「生命の危険な人には早いうちに人工呼吸や心臓マッサージをして」と呼びかけている。
(毎日新聞) - 9月8日5時3分更新

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2006年3月18日 (土)

腎の総合医療施設にて想う

役所の方に誘われて、病院の事務長さんの会の講師を務めさせていただきました。
その前に、会場となっている腎の総合医療施設を見学させていただきました。阪神淡路以上の地震にも耐えられる素晴らしい施設で、患者さんにとって心強い施設だなあ、と感じました。

しかし、一方で、人工透析の4割の原因が糖尿病(そして、その多くが生活習慣改善により予防が可能なⅡ型)かと思うと、資源のallocationの問題に心を痛めました。

健康日本21も、タバコと糖尿病だけに絞ればよいのに…と思う人間です。

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2005年8月19日 (金)

人間ドック受診者88%に「異常」…背景に技術向上も

 この記事と直接関係ないですが、最近、DSM(アメリカ精神医学会の診断分類マニュアル)の診断だとほとんどの人(正確な割合は失念)が異常になるという報道で、「だから、DSMがおかしい」という論調の記事がありました。つまり、それだけ異常な人が多いというのではなくて、ものさし自体がおかしいということです。
 これと同様に、人間ドックで9割近くが「異常」ということは、「だから人間ドックや検診はおかしい」ということで、人間ドックや検診がある意味(あくまで「ある意味」ですが)、破綻していると、とらえるべきではないでしょうか。

 「技術向上」は確かに否定しませんが、そういう言い方は少々ズルイ。
 これには、検査項目が増えたことが含まれましょうし、ペプシノ-ゲン検査のように、フォールスポジティブ(正常なのに異常と結果が出る)がもともと多い検査が増えたということもあります。

 そして、何より問題なのは、異常が見出されれば、検査、検査の連鎖。それで、たとえば早期がんが発見されたとして、それがよいアウトカムをもたらすのか(そもそも、どんどん侵襲性の高い検査をするのですから、そのマイナスも勘案する必要があるでしょう)などというきちんとしたデータなどないのです。

 もちろん、そういうことを十分知らされた上で、それでも人間ドックを受けたいというのであれば、真っ当なビジネスなのですが。

 それにしても、この記事は、「だから、検診の結果はおかしい」といいたいのか、「それだけ不健康な人が多いのだ」といいたいのか、それくらいは明らかにしましょうよ。

人間ドック受診者88%に「異常」…背景に技術向上も
 昨年の人間ドック受診者の9割近くに、肝機能の低下や肥満など、生活習慣病やそれにつながる何らかの異常が認められたことが19日、日本人間ドック学会(奈良昌治理事長)の調査で分かった。
 同学会は、食生活をはじめとした生活習慣の欧米化に加え、検査技術の向上で異変の早期発見が可能になっていることが背景にあると見ている。
 調査は、昨年の人間ドック受診者のうち約294万人を対象に行った。その結果、「異常なし」と判定された人は全体の12・3%で、前年よりも1・0ポイント減少。20年前の1984年(29・8%)と比較すると17・5ポイントも減っていた。男10・7%、女15・0%で、男性の方が健康な人の比率が低かった。
 項目別では、肝機能異常が25・2%と最も多く、次いで高コレステロール、肥満、腎・ぼうこう疾患、高血圧などが続いた。女性だけで見ると、高コレステロールが24・2%で最も多かった。
 調査を実施した同学会の笹森典雄・副理事長は「食生活以外にも、生活習慣病にはストレスもかかわっているとみられる。受けているストレスの強さを測る問診票を作製中で、来年から、人間ドックの際の生活指導に活用できるようにしたい」話している。
(読売新聞) - 8月19日21時45分更新

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2005年8月14日 (日)

<健康診断>項目の大半が有効性の証拠薄い 厚労省研究班

 いまさら、こんな当たり前なことを…、と多くの見識者は思っているのではないでしょうか。
 そもそも、検診の多くは毒にも薬にもならない。だから、例えば、大学の職員に職場検診をやると、やたら医学部だけ出席率が低い(一番高いのは工学部や理学部で、人間の体に対する感覚の差が分かる)のです。

 ということで、下らない検診をさっさとやめるのは、お金もないことですし、良いことでしょう。まあ、こういった研究も、予算を組めない厚労省の苦肉の策なのでしょうし。

 しかし、今まで、確とした根拠もなく、良さそうだということでやっていたことをやめるとなると、それはそれで抵抗があることでしょう。しかも、これで、生計をたてている人がいるのですから。

 とにかく、世の健診信仰を捨てて欲しいものです。

<健康診断>項目の大半が有効性の証拠薄い 厚労省研究班
 健康診断で実施されている代表的な24の検査項目のうち、肝機能検査や心電図測定など16項目は、病気の予防や死者の減少という視点では有効性を示す根拠が薄いとの評価結果を、厚生労働省の研究班がまとめた。自治体や企業に法律で義務付けられ、成人の大半が受ける健診の実施費用は、同省などによれば総額で年間9000億円近くに上る。多くの健診項目が「実施を勧める証拠はない」とされたことで、制度の見直し論議は高まりそうだ。
 報告書を作成したのは「最新の科学的知見に基づいた保健事業に係る調査研究」班(班長、福井次矢・聖路加国際病院長)。これまで、各健診項目の有効性は、ほとんど検証されてこなかったため、研究班は健診の効果的、効率的実施を目的に、各健診項目の効果と、その証拠についての医学論文を世界的に調べた。証拠の質の高さも加えて評価した。
 その結果、「血圧の測定」と、「飲酒」と「喫煙」に関する問診は、効果を示す十分な証拠があった。「身長・体重の測定」は減量指導を充実すれば有効、糖尿病検査の「糖負荷試験」や、「うつ病を調べる問診」は、健診後の指導や治療の体制整備を条件に、有効と評価された。健診が有効とされたのは以上の6項目のみ。他に2項目が判定保留となった。
 これ以外の16項目は「勧めるだけの根拠はない」「病気予防や悪化防止の証拠はない」などとされた。
 労働安全衛生法は、全事業者に年1回の健診実施を義務付け、労働者全員、約5900万人に受診を義務付けている。また老人保健法は、市町村などに、40歳以上の住民への健診実施を義務付け、対象者は約2900万人。さらに健康保険法などは、健保組合などの保険者に健診実施の努力義務を課している。
 福井班長は「日本では健診の有効性評価が手薄だったことを痛感した。今後、厳密な科学的評価を進めるべきだ」と話している。
 職場健診を担当する厚生労働省労働衛生課の阿部重一課長は「似た指摘は以前からあった。職場健診を議論している検討会で、各健診項目の有効性を考えてもらいたい」と言う。さらに「個人的には、健診の実施対象は一律無差別ではなく、医学的に必要な人に絞る方がよいと考えている」との見解を示した。【高木昭午】
 ◇健診のマイナス面も検証を
 厚生労働省の研究班が大半の健診項目に厳しい評価を下した。「検査すれば安心」との思い込みを排し、健康人への検査が本当に病気の予防や死亡率低下につながるかを冷静に確認した結果だ。
 研究班報告書によるとGOTとGPT、γGTPの値を調べる肝機能検査で、見つけるべき主な病気の一つは脂肪肝だ。この大半は、放置しても大事に至らない。他に見つけるべきものは、アルコール性の肝臓病とウイルス性肝炎だが、どちらも見落とされる場合が多い。検査するなら飲酒量の問診や直接のウイルス検査が勝る。そこで研究班は「実施の意義を再検討する必要がある」と結論付けた。米、英、カナダなどではGOTなどによる健診は実施されていない。
 肝機能健診の評価を担当した田川一海・三井記念病院副院長(消化器内科)は「GOTなどが高くても問題ないことは多く、それほど心配しなくてよい。逆に見落としが多いので、低くても安心はできない」と話す。
 胸部エックス線(レントゲン)検査については「肺がん検診としての有効性を支持する証拠はない」とした。別の研究班は01年に「海外の研究では肺がんで死ぬ人を減らせないとの結果だが、国内の研究からみて日本の肺がん検診は有効」としており、評価が割れた。今回は海外の研究が国内の研究より質が高いことを重視し、厳しい評価を下した。米政府の評価チームも昨年、日本の研究を含めた評価で同様の結論に達している。
 心電図の測定も、心筋梗塞(こうそく)の予防などに役立つとの証拠はなかった。検査で正常とされた人たちの方が、異常が見つかった人たちより、心筋梗塞や突然死に見舞われる率が高いとの調査結果すらあった。研究班長の福井次矢・聖路加国際病院長は「心電図検査は昔から健診として効果がないと言われてきた」と話す。
 あまり意識されないが健診にはマイナス面がある。放射線による発がんの増加、病気の見落としによる治療の遅れ、治療不要な病気の発見による不要な検査・治療の副作用、膨大な費用などだ。健診実施には、マイナスを超える効果があるかの検証が欠かせない。
 厚労省は先月、健診の検討会を作り、席上で今回の報告書の要旨を配った。日本もようやく、科学的根拠に基づく健診政策に乗り出す兆しが見えた。【高木昭午】
 ◆有効性について厳しい評価をした主な項目◆
・一般的な問診 明確な証拠はない
・視力検査   勧めるだけの証拠はない
・聴力検査   勧めるだけの証拠はない
・身体診察   明確な証拠はない
・聴診     明確な証拠はない
・腹部診察   ほとんど証拠がない
・心電図測定  虚血性心疾患の発見には無意味
・胸部X線   肺がん発見に有効との証拠なし
・コレステ   コレステロール低下には役立つが心
 ロール検査  筋梗塞(こうそく)予防に有効との
        証拠なし
・肝機能検査(GOT、GPT、γGTP)
        実施の意義を再検討すべき
・尿検査    糖尿病発見には不適切。腎不全など
        を防ぐ証拠はない
・血球数など  有効性を示唆する十分な証拠はない
・C型肝炎検診 判定保留
・B型肝炎検診 判定保留
(毎日新聞) - 8月14日10時13分更新

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2005年7月31日 (日)

厚労省 健診受診率9割に 医療費抑制へ目標値

 健診受診率が高まれば医療費が抑制される…実に素朴で明るい考え方ですが事実はそうではありません。

 第1に、生活習慣病の多くは、早期に見つけるだけで、生活改善に結びつけられなければ、全く意味がない。つまり、健診をやるだけ無駄につながっている。これは、医療モデルの限界。人の行動を変えるとはどういうことかを、日本人の社会・文化の中で、実践に基づいて極める必要があるが、そんなことまでしないといけないとなると、費用-便益的にはプラスであっても、財源的にはマイナスになる可能性も大。「糖尿病の保健指導」なんて、気軽に言うが、お金をかけただけの効果(国への財源効果)があるとは考えられない。
 第2に、一般に、医療費だけのことを考えれば、手遅れになって医療機関にかからない方が、コストが低い場合が多い。早期に見つけ出せば、それだけ寿命を延ばせる可能性が生まれるが、それだけ医療費をかけることである。そればかりか、厳密に評価が行われないと、早期に見つけ出すことによって、先日中止となった乳児の神経芽細胞腫の検診など、マイナス面が大きい場合だってある。

 こんな単純な事実、みんな分かっていると思うのですが、意外に、そうは思っていない人もいる。
 この記事を読むと、どこまで厚労省が本気で言っているのか、心配になりました。


厚労省 健診受診率9割に 医療費抑制へ目標値
 厚生労働省は二十八日、中長期的な医療費抑制に向け、生活習慣病対策などについて具体的な目標値をまとめ、与党側に示した。生活習慣病対策として二十歳以上の健康診断受診率を現在の約六割から九割に引き上げるほか、全病床の平均入院日数を三十八日から三十日以下に短縮する。厚労省は、これらの取り組みで平成二十七年度の医療給付費を約二・七兆円、三十七年度には約六・五兆円削減できると試算。経済財政諮問会議が主張する経済指標に代わる指標として、政府内の理解を求めていく考えだ。
 目標値は、(1)生活習慣病対策(2)医療と介護の連携による平均入院日数の短縮(3)終末期医療の見直し-の三分野で設定。生活習慣病対策では、糖尿病の発生率を今後十年間で20%、心疾患と脳卒中は25%改善させるとの成果目標を立て、そのために二十歳以上の健康診断受診率を現在の約六割から九割に、健診後の“糖尿病予備軍”に対する保健指導実施率を約七割から九割に引き上げる目標を設定した。
 平均入院日数では、主治医とケアマネジャーの連携強化や、早期に自宅に帰ることができる診療計画の普及、ケアハウスなど高齢者の受け入れ施設整備などで三十八日から三十日以下に短縮させる。
 また、終末期医療の見直しでは、自宅などで過ごしたいという患者が約六割に上ることを踏まえ、訪問診療に対応できる医師を確保するなど在宅医療体制を整備し、自宅など医療機関以外で死を迎える人の割合を現在の約二割から四割に引き上げることを目標に掲げた。
 厚労省は目標が達成された場合、十年後の二十七年度には生活習慣病対策で約一・三兆円、入院日数の短縮で約一・四兆円、終末期医療の見直しで約二千億円の医療給付費を削減、三十七年度には、同じく約二・四兆円、約四・一兆円、五千億円をそれぞれ削減できると見込んでいる。
(産経新聞) - 7月29日3時3分更新

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2005年7月25日 (月)

埼玉医大医療過誤・損賠訴訟:被告に執行猶予判決 父親、「実刑に」と訴え /埼玉

 先週末に報道された「医療過誤・訴訟」問題です。この事件は、ちょっとややこしいですし、前後関係もきちんお分からないまま語るべきでない…と思い、あえて何もかかないでおいたのですが、その後、新聞報道をいくつかみると、一言書かざるをえないと思って書きます。

 まずは、いつもと違い、記事から読んでみてください。

埼玉医大医療過誤・損賠訴訟:被告に執行猶予判決 父親、「実刑に」と訴え /埼玉
 ◇被告主治医に禁固1年6月--「ずさん医療、実刑に」執行猶予に父親訴え
 埼玉医大付属病院(毛呂山町)で00年に起きた薬剤の投与ミスによる医療事故。さいたま地裁(福崎伸一郎裁判長)は21日、業務上過失致死罪に問われた当時の主治医、田島弘被告(50)=東京都世田谷区=に禁固1年6月、執行猶予3年(求刑・禁固1年6月)の有罪判決を言い渡した。執行猶予付きの判決に、長女の真愛美さん(当時14歳)を失った父、船瀬俊介さん(55)は「ずさん極まりない医療行為で実刑であるべきだ」と訴えた。
 田島被告は同年5月1日から約1カ月、入院中の真愛美さんに栄養補給のため高カロリー輸液治療をしたが、併用が義務づけられたビタミン剤を投与しなかった。判決は「医師の間では基本的注意義務に属する初歩的なミス」と指摘し、多臓器不全で死亡させたのは「重大な過失」と認定した。
 医療事故を巡っては01年、両親が田島被告を殺人容疑で浦和地検(現さいたま地検)に刑事告訴し、同病院らを相手に損害賠償訴訟をさいたま地裁に起こした。東京高裁は昨年、病院側の多重過失を認定して賠償金約4960万円の支払いを命じ、判決が確定している。
 民事訴訟で、田島被告は「ビタミン剤は毎日投与する必要はなかった」などと一貫して過失を否認した。ところが刑事裁判の初公判では主張を一変させ「併用義務は知っていた。(指示書に)書いたつもりだった」などと陳述。初めて両親に謝罪し、民事で虚偽証言を繰り返したのは「医局の裁判対策に従った」と釈明した。判決はこの点にも触れ、「(遺族に)不信感を募らせた。病院側の体制も厳しく非難される」と指弾した。
 現在、他の病院で医師を続ける田島被告は判決後、控訴しない意向を示し「大学のためにという思いでやってきた。遺族の許しがあれば墓参りをしたい」と話した。
 一方、俊介さんと母の睦子さん(47)は閉廷後、「責任をなすり付け合い、チーム医療の体をなしていない」と同病院を非難し、「これからも娘の死を忘れず、社会のために頑張りたい」と話した。【村上尊一】
7月22日朝刊(毎日新聞) - 7月22日16時25分更新


 さて、どのような印象を受けられましたか。
 高カロリー輸液療法の際に適切な量のビタミンB1が必要不可欠なのは、一時期社会問題化したこともあり、一般の人間で知っている人は知っていると思います。それくらいですから、現時点で、こういった医療過誤が起これば、まちがいなく、刑事でも民事でも患者側が勝つことになると思います。
 ただ、00年の事故というと、丁度そのころ、高カロリー輸液療法の事故が注目を集めた時期だけに、当時の医療のスタンダードとしてはどうなんだろうと思います。それにしても、「ビタミン剤は毎日投与する必要はなかった」というのは、どういう意味なのだろうか?と考えてしまいます。

 いずれにしても、この医師は執行猶予がついたとはいえ刑事事件での有罪であり、社会的にも相当制裁を受けている印象を受けます。もちろん、14歳の娘さんを失ったご両親の悲しみは、それで償われることはないと思います。特に、民事裁判で、大学側がいわば嘘の主張で論陣をはった訳であり、ご両親のお怒りはごもっともです。

 それにしても、お父様の「実刑であるべきだ」という発言は、私は、酷な気がします。実刑ということは、つまり、刑務所に入れろといっているわけです。いくら犯罪的なミスとはいえ、故意でもなければ、故意に近いような状況(例えば酔っぱらい運転で交通事故を起こしたような場合です)だったわけではないように思えるからです。医療裁判の場は、真相を解明したい、とか、反省させ今後こういうことが起こらないようにさせたい…というものであるべきと思っています。単なる「仕返し」に過ぎない制裁は、いかがなものかと思います。
 むしろ、「制裁」より、この医師の医師としての再教育とか、あるいは適正評価といったものはきちんとなされたのだろうか、という気もします。
 繰り返しになりますが、なにしろ、状況を知らないで、勝手なことは言えませんが。こんなことは、新聞記事を二次的に読んだだけで、判断すべきことではないでしょう。

 さて、そういう状況でありながら、敢えてここでこの記事をとりあえげた理由をここから書きます。

 この記事を読んで、気になったのが、14歳で高カロリー輸液をしなくてはならない状況です。そこでこの記事をネット上で検索したところ、他のページではこういうことが書いてありました(いずれも、真偽は不明。色々な記事に書かれてあることをつなぎ合わせたのみです)。

● この少女は統合失調症の昏迷状態にあったため高カロリー輸液療法を受けている。
● 民事訴訟の判決では、向精神薬の副作用で発熱や意識障害が起きる「悪性症候群」になり多器臓不全で死亡したとされている。
● この主治医は医師としての臨床経験は約20年、精神科としての経験は1年
● この少女の父親は「買ってはいけない」の著書で知られる評論家船瀬俊介氏である。

 特に2番目には困惑します。確かに、抗精神薬(この場合こちらの方の字がより正確なはず、上の「向精神薬」は記事のママ)から多臓器不全が起こり死に至る場合はあります。記事をどこまで信じて良いのか分からなくなりますが、14歳の少女が統合失調症で昏迷状態にあり、抗精神薬を大量に投与され、しかも高カロリー輸液を受けなければならないほど、昏迷状態が続いているという状況は、極めて極めて希な状況です。そもそも14歳の少女の統合失調症がめずらしい上に、統合失調症の昏迷状態も最近では珍しいですし、高カロリー輸液を受けなくてはならないほど昏迷状態が続く(しかも抗精神薬が入っていて)というのは、なおのこと珍しい。つまり、珍しいの3乗くらいです。
 精神科1年目だとすれば、1つ1つの「珍しい」が全て初体験のはずです。そういう状況で、精神科1年目のベテラン医師が担当する状況がちょっと分かりにくいです(ちなみに、埼玉医大はもともと毛呂病院という精神病院が発展してできが病院で、典型的な新設校の1つです)。そもそも、他科で20年近い経験があり、大学病院の精神科で1年目からやり直すというのも、余り聞かない話です。
 
 私が何を言いたいかというと、こういう色々な難しい背景を聞くと、単純に「医療過誤」という範疇だけで、この事件をとらえることが実に困難であるということです。そして、それにもかかわらず、この事件を強引に「医療過誤」だけで読ませようとして、様々な情報を敢えて出さないようにしている、これが今のマスコミのやり方(マスコミ全体というのは大げさかもしれませんが、特に、この毎日新聞の記事が一番、不親切というか、誘導的です。しかも、署名記事ですよ!)ということです。

 再三、繰り返しますが、記事だけで、色々と判断するのは不適切だと思いますが、少なくとも、マスコミが偏向報道を行っていると言うことだけは、明らかではないでしょうか。

 今、まっとうな大人として問われているのは、マスコミリテラシーだと思います。また、まっとうな先進国にある「高級紙」のないわが国の現状が大変残念です(一般に、欧米では、ワシントンポストのような地域限定で、比較的限られた層が読み、主張が明確で部数の少ない「高級紙」と、そうでない「イエローペーパー」に分かれます。日本の新聞の多くは、この中間であり、両者の良いところをとっているとも、悪いところをとっているとも言えます。ただ、高級紙がないことで、健全な知的階層が育ちにくい、ということは言えるように思います)。
 署名記事で、こんな杜撰な記事が許されているようでは、日本にまともな知性が育ちにくいのもやむを得ないという、少し寂しい気持ちになりました。

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2005年7月22日 (金)

アスベスト公害の恐れ、旧労働省が71年に指摘

 「また、官僚の「不作為か」!」という声が聞こえてきそうです。
 こういう短絡的な言い方を、またぞろマスコミの方々がおっしゃっているようです。

 昨日の胸部X線検査の話でもそうなのですが、これまでやってきたことが有害であることが分かってきたという場合、それをやめることによって、往々にして、特定の産業や雇用に大きな影響を与えます。
 ここに登場するのが、特定の産業・業界&その業界をバックアップする政・官です。
 困ったことに、因果関係というは、一般の方が思うほど単純ではありません。例えば、水俣病やサリドマイド被害に関して、当初、学者間でも多くの議論がなされるほど、明確ではなかったのです。

 現時点で、因果関係がよく分からないものの例をあげると、電磁波被害による発がん性とかアルミニウムによるアルツハイマー病発症があります。多くの方は否定的ですが、強力に肯定している方もいます。

 こういう分野では、「疑わしきは罰せず」というわけにはいきません。
 しかし、「少しでも疑わしきを、全て罰する」というわけにもいきません。
 この当たり、どこまでを「罰する」かのさじ加減が相当に難しいわけです。O157に関して、かいわれ業者が疑われたり、テレビ局がダイオキシン被害の農作物を報道した事件については、皆さんも覚えておられるでしょう。
 「あれはあれで良かった」という気もします。
 ただ、当然、それをやめてどのくらい困るか、ということも勘案せざるをえないでしょう。例えば、BSEに関しては、アメリカの肉牛を禁輸しても、まだ我慢できる範囲ということがあるでしょう。

 ただ、今のように「ある程度、疑わしければ罰する」ことが当たり前、あるいは許されるようになったのは、ここ10年くらいの動きです。1971年にそういう意識は全くなかったはずです。
 こういうものを、今となって分かっている「後知恵」ことから裁こうとすると、結局は、犯人捜しに終わってしまい、我々の社会がなんらレッスンを得ることができません。「あのとき、こうできたに違いない」と考えていても何ら得るものが無く、「あのときなぜ、こうできなかったか」と追求することでないと、有益な教訓は得られないということです。
 ところが、多くの方は「誰が悪かったんだ?」と犯人を決めたがりますし、また、「悪いのは政治家か官僚だろう」と決めたがります。したがって、マスコミもそういう観点から物事を見ていないところがあります。
 なぜみんなそう早く犯人を決めたいのか。おそらく、中世の魔女狩りと同じ意識でしょう。早く悪者を決めてひとときの安心を得たいのだと思います。不可思議な分からないことに対する、本能的な嫌悪ともいえるかもしれません。
 組織、政治、力関係といった中で、勇気をもった政治家や官僚が立ち向かうことが、どれだけ難しいかということも、心にとめておく必要があります(是枝裕和「官僚はなぜ死を選んだか」が好著です→お薦め参照)

 健全なる知性を多くの方が持つことにより、「後知恵による魔女狩り」こそが脅威であることを理解した社会になって欲しいと思います。


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アスベスト公害の恐れ、旧労働省が71年に指摘
 作業現場でのアスベスト(石綿)の飛散防止を盛り込んだ「特定化学物質等障害予防規則(特化則)」が施行された1971年、旧労働省が職員や業者向けに出版した特化則の解説書の中で、アスベスト飛散が労災だけでなく、公害問題に発展する可能性があると指摘していたことが21日、分かった。
 当時、公害は旧厚生省の所管で、出版翌月に旧環境庁が発足したが、旧労働省の指摘は生かされず、周辺への飛散防止対策は、89年の大気汚染防止法改正まで講じられなかった。
 厚生労働省によると、旧労働省は70年9月、アスベストを含む46種類の有害物質を扱う全国1万3665の事業所を調査。アスベストを扱っていた150か所のうち、41か所で粉じん対策をしていない実態を突き止めた。
 アスベストの危険性は海外での研究などで指摘されていたため、旧労働省は翌年4月、飛散防止を盛り込んだ特化則を制定。同年6月には、特化則を円滑に運用する目的で解説書を作成した。
 序文は当時の労働基準局安全衛生部長が執筆。「有害物質の規制強化が、労働者の健康を守るだけでなく、公害防止に寄与する」と特化則制定の意義を記している。
 アスベストを有害物質に指定した条文説明では「大気中に放出すると、労働者への中毒や障害のみならず、公害をもたらすことになる」と、明確に指摘していた。
 旧環境庁はアスベストの吹き付け作業が全面禁止となってから2年後の77年、大気中のアスベスト濃度測定を開始。規制も検討したが、「一般国民にとってのリスクは著しく小さい」として、公害対策としての規制措置は見送られた。
 同庁が大気中のアスベスト濃度規制を本格検討し始めたのは、学校での使用が社会問題化した87年。大気汚染防止法の改正で規制が設けられたのは89年になってからだった。
(読売新聞) - 7月22日3時12分更新

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2005年7月21日 (木)

<胸部X線>健康診断で廃止検討、有効性に疑問 厚労省

 記事では分かりにくいですが、労働安全衛生法では義務づけが遺っており、結核予防法ではこの4月に廃止されています。
 日本は戦後しばらく結核大国だったこともあり、毎年毎年エックス線検査を受けることが義務づけられていたのですが、それをやめようということ。
 この当たり、記者がどこまで分かって書いているか、あるいは、一般の方がどこまで理解していただいているかですが、検診や予防の世界では、公衆衛生学的(統計学的・医療経済学的)にメリットとデメリットを勘案して、「やる・やめる」を決める必要があります。
 例えば、下の記事では1万人に1人しか結核が見つからない…となっています。一方で、エックス線検査による被爆は極めて小さく無視してよいレベルではありますが、それを何十年も続けているとなると、一定割合でその影響が出てくる確率が生じます。それを比較するということです。
 最近、日本脳炎の予防接種や、インフルエンザの予防接種について、色々ニュースになりますが、基本的にそういうことなのです。予防接種は、大なり小なり副作用が生じます。仮に1000人に一人副作用で死ぬという副作用の極めて強い予防接種があったとしても、予防接種をやらなかった場合に100人に一人死ぬというのであれば、予防接種をやりましょう…ということになるわけです。ここで、副作用で死ぬ確率と予防接種をやらなかった場合を比較することが必要になるわけですし、どちらも「死」という尺度だけで比べられれば良いですが、3日間寝込むとかだったらどうするんだということにもなります。

 これまで、記事にあるように、わが国では、「よさそうだ」ということで、どんどんやってきました。
 これは、相当、無駄・無理がありました。これまでは、何もかもが右肩上がりだったので、「良さそう」で始められたのですが、お金がないこともあり、これからはどんどん見直されていくことでしょう。
 基本的には良いことだと思います。

 しかし、問題なのは、第1に、以前も書きましたが、予防や検診をやめる・やめないを、誰がどうやって判断するかということが、制度上明確になっていないこと。現在は、官僚が思いついて研究を設置して検討するという手順です。やはり、行政の中に常設の検討・監視機関が必要なのと、できれば議会に必要だと思います(アメリカのOTAのイメージ)。また、こういったことを検討できる研究者の層も余り厚くないのは問題かもしれません。

 第2に問題なのは、何か予防・検診をやめることによって、今まで機能していたものを失わせるという問題です。
 抽象的で分かりにくいので具体的に指摘します。例えば、現在、わが国では日本全体で検診車がやってきて検診するという仕組みができあがっていますが、胸部X線検診が廃止されれば、この仕組みが失われる可能性があると思います。医師のX線読映技術に影響を与えるまでのことはないと思いますが、結核に対する意識や診断技術を低める効果はあるかもしれません。

 業界団体の方の「廃止は健診料金の大幅値下げや受診者の急減につながりかねず、死活問題だ」は、余りにも自己中心的で下品な発言です。こういうことを業界団体の理事(天下りかもしれませんが)が言うようでは、全く困ったことです。せめて、「効果をきちんと検討して不要なものはやめていくということにも、業界全体として取り組んでいかざるをえない。しかし、全国どこでも気軽に検診が受けられるという体制に大きく影響を与えかねないし、各事業者の倒産等の影響をどう考えるかという問題もあわせて考えて頂く必要がある」程度は言えないものでしょうか。



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<胸部X線>健康診断で廃止検討、有効性に疑問 厚労省
 胸の病気の早期発見を名目に毎年1回、職場の健康診断で実施されている胸のエックス線検査について、厚生労働省は法的義務付け廃止の検討に入った。検査の有効性を示す証拠がないためだ。すでに専門家による検討会(座長・工藤翔二日本医大教授)を設置しており、結論次第で来年度にも廃止する。しかし廃止で1000億円規模の影響が出るとみられる業界は、検討会で「有効だとの証拠はないが、有効でないとの立証もない」と猛反発。日本医師会の委員も同調しており、最終調整は難航しそうだ。
 エックス線検査は労働安全衛生法の規則が定める職場健診の1項目。同法は72年の施行以来、事業者に対し年1回の実施、労働者には受診を義務付けており、罰則もある。受診対象者は現在、約5900万人に上る。
 結核予防法も年1回の検査を義務付けていたが今年4月に義務は廃止された。見つかる結核患者が受診者1万人に1人未満と少なく、発見の利益よりエックス線被ばくの害が心配されるためだ。
 同省は当初、労働安全衛生法での義務も同時に廃止する考えだった。同省の阿部重一・労働衛生課長は今年1月、業界団体の「全国労働衛生団体連合会」(事務局・東京都港区)の幹部らに「4月から廃止したい」と明言。だが連合会の反対などで4月の廃止を見送り、検討会を設置した。
 検討会では矢野栄二委員(帝京大医学部教授=公衆衛生学)が、職場健診での肺がんの発見率は低く見落としが多い▽他の病気も検査以前に症状が出るなどで健診で探す意義は薄い▽エックス線被ばくの影響で発がんする人が延べ数万回から10万回の受診に1人出ると推計される――と指摘。利益と危険のバランスを考え、義務を廃して特に必要な人だけを検査すべきだと主張している。
 一方、連合会副会長の柚木孝士委員は、検討会に出した資料で「(個々の病気の発見法としては)優れた検査法とする根拠は乏しい」と認めながら「有効性が低いとする根拠は確立されていない」と存続を訴えている。
 職場健診の費用は全国で年間3000億円から4000億円と推定される。連合会の梶川清専務理事は「廃止は健診料金の大幅値下げや受診者の急減につながりかねず、死活問題だ」と言う。
 阿部課長は「従来は、とにかく検査するのは良いことだとやってきたが、今は有効性の証拠が求められる時代だ」と話している。【高木昭午】
(毎日新聞) - 7月17日3時3分更新

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2005年7月18日 (月)

中止勧告の日本脳炎予防接種、再開視野に緊急研究

 どんな予防接種でもメリットは当然ありますが、多かれ、少なかれデメリットがあります(副作用)。しかし、日本脳炎の予防接種の場合、急性散在性脳脊髄炎の報告が相次ぎ、日本脳炎の発症による被害より問題となってきているのです。

 予防接種のメリットの中で大きいのが、「自分がかからない」というの同じかそれ以上に、「人に移さない」というメリットです。特に感染の拡大を制圧するためには、この「人に移さない」という効果は重要です。予防接種は、経済学でいうところの「外部性」があるのです。
 したがって、多くの予防接種は、自分のためにやるだけでなく、国民全体のためにやるのです。予防接種が、半強制的になっていたり、費用を国が負担したりする根拠は、ここにもあります。
 しかし、これだけ感染症が征圧されてくると、大規模な感染拡大は、インフルエンザくらいしか考えにくくなっています(未知のウイルスは別として)。そうなると、予防接種をやるメリットはどんどん薄れてきています。
 しかも、詳細省きますが、実は、日本脳炎というウイルス、人から人への感染がありません。ブタ→蚊→人間だけの感染なのです。したがって、本来は、国が強制せずとも、自らの判断で受けるべき、という考え方もあります。
 さて、という意味で、我々が本来知るべき情報(マスコミや行政が知らせるべき情報)というのは、以下の通りです。

①日本脳炎ウイルスは、感染しても発症するのは1000人に1名前後と発症率の低いウイルスの仲間に入ります。また、発症するのは、子どもかお年寄りだけです。しかし、発症しても、基本的に治療法はありません。予防接種で予防するしか途はないのです。発症すれば、半数程度が、死ぬか極めて重い脳炎の副作用を残す、大変怖い病気です。
②現在は、アカイエカやブタが生息する条件が日本では少なくなってきているため、感染は減ってきていますが、東南アジアでは依然、年間数万人レベルで発症しています。
③また、予防接種後抗体価は10年程度で消えていきます。予防接種を受けた後、10年経過すればまた新たに予防接種を受ける必要があります。
④現在の予防接種の副作用は、その製法に原因があると考えられています(予防接種は、他の動物を使って作るため、どうしても不純物が混じりやすい)。現在の予防接種の禁止措置(正確にいえば、「接種推奨の中止」)は、あくまでも、新しい予防接種が開発されるまでの間の措置です。

 どうでしょうか。いかに、マスコミが十分な情報を提供していないことがお分かりになるでしょう。こんなことは、きちんと厚生労働省のHPに記載されています。
 これは、こういった情報まで「きちんと理解しなくてはならない」と考えていない、我々側の問題とも考えられます。マスコミは、所詮「みんなが聞きたいことを報道する」機関に過ぎませんから。

 ところで、以上の知識があると、下の記事を書いた人が、これらの知識がなく報道しているか、面白おかしく報道するために真実を加工していることが明白でしょう。最後の段の「しかし」によって、国があたかも、どたばたやっているように読めますが、これは、「「国がいい加減である」という記事の方が、国民が読みたがっている」という記者の憶測と無知により、こういった記事が形成されたことと憶測されます。しかし、④の通り、国は最初から、一旦「接種推奨の中止」しただけです。
 「嘘」を書かない限り、読者を楽しませて売上が上がるから良いと考えているのかもしれませんが、誤った印象やイメージを国民に与えることが、いかに危険で、いかに現場が困るかということも、考えるべきでしょう。
 揚げ足をとるつもりはありませんが、こういう不適切な記事をきちんと発見し、きちんと訂正する仕組みがないと、「レベルが低い」と言われてもしょうがないのではないでしょうか。



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中止勧告の日本脳炎予防接種、再開視野に緊急研究
 重い副作用の報告を受け、市町村による接種推奨の中止を今年5月に勧告したばかりの日本脳炎ワクチンについて、厚生労働省は17日、勧告の解除を視野に入れた緊急研究に8月から乗り出す方針を決めた。
 接種をやめた場合に患者が急増する危険性など、推奨中止の根拠とすべき研究が十分ではなかったためで、副作用と接種の因果関係を含め分析する。同省は、審査中の新型ワクチンが承認され次第、来年前半にも接種再開の是非について判断を下したい考えで、専門家らによる特別研究班を発足させ、年度内に研究を終える予定だ。
 1960年代前半に年間2000人前後だった国内の日本脳炎の患者は、92年以降、数人程度にまで激減。予防接種を中止しても患者は急増しないという見通しのもと、厚労省は緊急措置として今年5月に勧告に踏み切った。
 しかし、ウイルスを保有するブタは依然、ほぼ全国で確認されており、その血を吸った蚊が人間への感染を媒介する危険がある。専門家の間には、接種中止が数年に及ぶと患者が増えるとの懸念が広がっている。
(読売新聞) - 7月18日3時15分更新

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