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2009年8月30日 (日)

丸ノ内タクシー事情

 新霞が関ビルでの要件を終え、早稲田方向に向かうためタクシーを拾おうと、霞が関ビルとの間の道に出た。
 一車線一方通行の細い道であるが、2回に1回くらいの確率で、すぐにタクシーを拾える道だ。近所には文化庁の前にタクシー乗り場があるのだが、赤坂六本木方面に行くのには不自由(時間帯にもよるのだろうけれど、早稲田に向かうのも、外堀外回りで行くのが早い)なので、ここで拾うのが、「タクシー乗りの通」である(そんなことで、胸をはってもしょうがないが、都内でも、場所によっては、タクシーのほうが大幅に時間節約になるのです)。

 一方、丸ノ内霞が関近辺の考えながら仕事をしている運転手さんにとっても、この道がかなり高確率で客を確保できることを分かっておられる。たとえば、タクシーに乗って「新霞が関ビルまでお願いします」といった瞬間に、「霞が関ビル側でよろしいですね」と答える運転手は、まず間違いなく、考えながら仕事をする人である。

 今回、私が、タクシーがいないかなあ、と目線を走らせた瞬間に、止まっていた空車タクシーが、すっと私の横につけた。
 その道で流しているタクシーは珍しくないのだが、止めてまっているタクシーはめずらしい。
 早速、それを聞いてみると、
「いまは本当に厳しくなって、丸ノ内霞が関でも、流していて拾っていただけるケースがものすごく減ってきているのです。」
「売り上げはどんなもんですか。」
「うちの営業所で、月4万くらいになってます」
※ 丸ノ内霞が関あたりだとこれはかなり低い状況です。
「それは大変ですね。…でも、コンスタントに8万くらい売り上げる人もいるわけですよね」
※ 都心部だと、運転手の頭の使い方で、相当な差がでる。
「確かにいますけれど、今、それだけ出すのは、ルールを守ってない人ですね」
「というと、勤務時間ですか」
「そうですね。休憩1時間にして、1時間延長するとかやらないと、子どもさんを育てている人は大変みたいですね」
※ 確か、道路交通法令上、休憩3時間、1回の勤務時間16時間に規制されている。
「会社のほうはうるさくいわないのですか」
※ 最近、国交省が規制官庁になって、厳しい監査がある。守らないと営業停止まである。
「そうなんですよ。うちあたりはうるさいので、例の国際自動車さんに、一時期は40~50人行ってましたよ。」
※ 「例の」とは、関東運輸局が2月に監査が入って、運転手の超過勤務などに関して道路交通法違反が見つかり、営業停止処分をくらいそうな件である。
「ああ、やっぱり、国際自動車は、緩かったんですか。」
「私らの中でも有名でした。今の時代、コンプライアンスを守らないことをやっていて、どういうことになるかというのを、経営者が考えてないんでしょうかね…それに、いくらお金がいるからといって、そういう会社で働こうという意識も疑いますね。」
「国交省の基準が厳しすぎるってことはないんですか。」
「でも、休憩時間や労働時間をちゃんとしないと、はっきり事故に通じますからね。」
「ああ、やっぱりそういうもんなんですね。」
「その点、しっかりしておられるのは、日本交通さんですね。」
「そうなんですか。あそこの三代目、ちょっと前にテレビに出てましたね。」
「いろいろ噂はあるようですけど、やはり、きちんとそういうことを守らせて、経営を成り立たせているというのは、立派です。」
「なるほど、なるほど。」

 日本交通の三代目というのは、「タクシー王子」として有名な川鍋一朗さんのことである。
 慶応経済を出て、NW大ケロッグのMBAを取得してマッキンゼー→家業を継いで34歳で社長、という、華やか過ぎて、やっかみたくなる経歴の持ち主である。
 半分以上やっかみなんであるが、こういうキャリアの方は、だいたい「経営ごっこ」が好きである。ただ、彼が社長になった時点では、経営がそうとう厳しい状況になっていたので、「ごっこ」をやっているひまもなかった。
 ようやく立て直した2007年12月突如「タクシー運転手をやる」と1カ月、自社の運転手業(経営の合間なのではなく、真剣に)をやったというので、ニュースになった。テレビでも取り上げられていたので、ご存知のかたも多いだろう。

 こういう行動をどうみるか、は意見が分かれるであろう。パフォーマンスという見方もあろうし、1カ月で何になるんだという意見もあろう。一方で、大企業の社長が、きちんと現場を知ろうとしているのは偉い、という見方もあろうし、それに対して、「いつまでも「家業」気分じゃだめだ」という意見もあろう。
 私は、こういう「パフォーマンス」は、それ自体が良い悪いじゃなくて、何かの一環としてやるのであって、あくまで結果に表れることだろうと思う。
 ただ、川鍋氏のタクシー勤務をとりあげたテレビ番組で、会社の運転手が、おもしろいくらい、「どうでもいいんじゃない?」のスタンスだったことには、大変興味を覚えた。少なくとも、川鍋氏は、自分の行動を「パフォーマンスと受け取る人が多いだろうな」くらいは、よくわかっているのだな、と思ったからだ。

 それで、興味を覚えて、「タクシー王子、東京を往く」まで買って読んでみた。
 一番、感心したのは、「今自分は37歳、少なくとも、父親が亡くなった67歳まで社長をやるとして、あと30年、その30年間、長期的、持続的な成長を遂げるために、いま自分は何をなすべきか」という考え方である(そのために、現場でタクシー運転手をやったわけである)。
 世襲のことを悪く言う人は多いが、うまくいくかどうかは、全く別として、30年先のことを考えて、経営を組み立てられるのは、世襲だけだろう。
 「やとわれ社長」は、2期4年に実績を残すことが精一杯で、下手をすれば、前後を犠牲にする。V字回復なんて、その多くは会計操作に頼っており、新社長の実績づくりのことも少なくない。

 そういうことで、日本交通という会社については、大変興味をもっていた。コンプライアンスを守っていることを他社の運転手にも賞賛されているということ自体、すばらしいことであろう。それが、業績に結び付いているかどうかは別として。
 タクシーの業界は、最大手の日本交通で500億円に満たない小規模乱立業界である(ちなみに、2番手が国際自動車になるのではないかと思う)。非上場がほとんどで、同族経営も多い。
 タクシー運転手として、どうやって売り上げを上げるか、というのは、MBAの素材になりがちなテーマであるが、今の時代、タクシー会社をどう経営していくべきか、そして、そのことが勝ち負けを生むのかどうか(今のところ、極端な勝ち負けはないように思うが)もおもしろいテーマではないかと思った。

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