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2006年10月22日 (日)

研修の単価再考

 最近、土日も仕事をしていることが多く、ちょっとオーバーワーク気味です。
 進めなくてはならない仕事まで、ちょっと遅れている状況です。

 最近、介護の現場の高度化にともない、系統だった研修が指向されつつあります。制度的にもこれを後押ししようという流れがあります。
 本日も、施設長・介護課長クラス対象の研修の講師として出かけて参りました。全体で100時間くらいのプログラムを組んでおられ、私はそのうち3時間半を担当させていただきました。

 この話しとは直接関係ないのですが、講師に行って、こんな話しを聞きました。
 ある大学の先生で、大変優れたプログラムで大変良い話しをなさる方がいらっしゃるようです。私はその方を直接知りませんし、具体的な内容も知らないのですが、とにかく、参加した人に感動を与えるのだそうです。
 しかし、その方の金銭的な要求等が分不相応なので、首をかしげているというのです。

 研修業界のペイは、単純にいえば、「有名度」8で、「内容」2です。内容のある人は有名度が高い傾向にありますが、全く内容がなくても有名度が高い人もいます。テレビにしょっちゅうでて、その人が来るというと、聴衆が集まるという人ですと、100万円というレベルになっていますが、業界の有名人レベルで10~20万円クラスではないでしょうか。

 以前も書いたかもしれませんし、私のHPをみていただければおわかりになりますが、私は研修の講師を引き受ける際、料金の注文をつけたことがありません。
 正確にいえば、謝礼を下げるようお願いしたり、それをそのまま寄付したりすることはあっても、料金を上げてもらうようなお願いをしたことはありません(ただし、1回、あまりにも世間相場と異なる料金の提示があったので、「それは常識的ではないのではないか」といったことを言ったことがあります…これは、朝から夕方まで1日の研修で約2万円という提示があった際のことですが、結局、先方がいう2万円は時間単価ということで(時間単価を提示するのが妙ですが)落ち着きました。また、言い値ですと、高い、安いがあります。冗談が通じる相手なら、「安いですねえ」と口走っていることもあると思いますが…

 私が、料金に注文をつけないのは、別にお金がほしくないからでもなんでもありません。
 世の中のものはなんでも、価値があれば、高い値段がつくものですから、高い値段をつけていただければ、大変ありがたいと思います。しかも、そのお金で、私が豊かになるのですから、これは大変ハッピーなことです。

 私が値段交渉をしない1つの理由は、私が以前にいた会社の単価が極めて高額で、その単価に応じた仕事がなかなかできないために煩悶していたということがあります(最近になって、業者の見積もりとか企画とかを見せて頂く側になって、あらためて私のいた会社が妙に高いことに驚きます…決して、単価の分だけ良い仕事はしていませんでした)。こちらから値段をふっかけることの辛さに、懲りていたということですね(まあ、こう感じるのは、私の貧乏性(よく言えば誠実性)のせいですが)。

 それから、会社員時代のお願いする立場からの経験では、お金のことを色々言ってくる大学の先生は、どんなに優れていた方でも、評判を落とすこともさることながら、実力が伸びないというか、大成しないということをみてきました。「銭ゲバ」という噂の高かったある先生は、とうとうお金の件で、捕まってしまいました。

 それから、研修をビジネスとして企画することもやってみた経験から、研修ビジネスというものの難しさを知っていたので、そもそもそれで儲かるものだと思っていないというのもあります。

 ということで、フリーとはいえ、研修で生計をたてる気はなく、あくまで頼まれるから、あてにしていただいているから引き受ける、あるいは、そういう場を通じて勉強するというつもりでした。ですから、時間があれば、講師をやるついでに、事業所を見せて頂いたり議論したりということを、お願いしてきました。また、口幅ったいですが、常によりよいモノを目指して努力しているつもりですし、例えば、違う対象でも、全く同じ話しを2回したことはありません。これは、来て頂いている方に、分かって頂きたいという想いと、自分自身が成長するためという意識でいます。
 ちょっと格好良すぎますが、フリーでやるということは、そうでもしないと、すぐ誰も相手してくれないですからね。要するに、格好をつけていることも含め、私自身を「売る」ための「マーケティング」ということです。

 さて、以上述べてきたことは、フリーになる以前から思っていたことも多いですが、フリーになって実質3年目、違う印象を持っています。
 具体的には数字をみていただくとわかりやすいと思います。

2004年 年間講師引き受け回数28件/お断り回数0
2005年 年間講師引き受け回数54件/お断り回数12
2006年 年間講師引き受け回数60件/お断り回数24(現時点)

 2年目は回数が倍増して、断らなくてはいけなくなりました。
 3年目は、お引き受けする回数が限界を超え、お断り回数が倍増しています。
 さらに、上には書いてありませんが、私がいただく謝礼の平均値が、2004年、2005年がほぼ一緒であったのに対し、2006年には約2万円も増えています(確定申告のためデータを保存しているのですが、今回、このブログのために計算してみて自分でもびっくりしました)。

 回数がここまで上がっているのは、介護保険制度改定の影響も大です。それに加え、単に値段に拘らないということも大きいと思っています。というのも、上に述べたように値段交渉する方や、自分で例えば10万円という単価を決めている方もいるのですが、私の講義はそういう方と、多分ほとんどレベル的に変わらないと思います。そうなると、当然、私の方に依頼が多くなるでしょう。

 しかし、3年目は単価が上がったことは説明できません。
 単に「あの人なら安いから」ということではないようです。

 単価が増えた現象について、私なりに、この要因を分析してみます。

 まず、今年は、3件に1件はお断りせざるをえない状況ですから、高額なものを私が意識的・無意識的に選択したという可能性が考えられます。しかし、当初から、謝金の提示をいただくケースは希ですから(引き受けてから、謝礼の話しになる場合も少なく、通常は、振り込まれてから、もらってから金額が分かる場合が多い)、これは否定できます。

 それでは、私が何を優先して選択しているかというと、リピートと依頼側の熱意です。それから、お世話になっている方々からのご依頼は当然優先しています。
 一見不思議なことですが、お世話になっている方々に依頼された研修の謝礼は、そうでない場合に比較して、かなり高くなっていました。私はお世話になっているつもりでいるのですが、それはそれだけ、先方が私を見込んでくださっている、大切にしてくださっているということもあり(自分で言うのも口幅ったいですが)、それだけ私にはひょっとしたら分不相応な謝礼をいただいているのかもしれません。結局、お世話になっているからと思って引き受けているけれど、結局、またお世話になっている形でもあるのです。

 逆に単価が安いところというのは、概して熱意がないケースが多いです。毎年決められたプログラムをこなさなくてはならない、色々聞いて回ったら藤井という名前が挙がったので、じゃあ、おねがいしようか…という感じです。そういうところですから、予算も決まっていて、研修の参加費用も安いのです。したがって、研修参加者も、なんとなく参加している人が多いです。こういうところの研修の講師は、本当にやりがいがありません。
 それで、こういうところを引き受けないようにしているわけですが(もちろん、謝金は聞かずに)、それが結果的に、単価上昇に寄与しているのではないかと思います。

 こういうと、「安いと引き受けていない」と聞こえるかもしれませんが、そうではありません。むしろ、今年あたりご依頼の幅も広がり、「熱意があるが、謝金は出すお金がない」というところも、お引き受けるようになっています。ちなみに、謝金をそっくり寄付させていただいたのを含めると、実質無料で引き受けた(税務署的には違いますが)のが、今年は4件あります。こういうのは、昨年までなかったですね。

 それから、私自身の関心があって、演習形式の講義を取り入れようとしていることがあり、まる1日コースといった依頼も少しずつみられるようになってきました。時間単価は変わらなくても、回数単価は高くなりますね。


 以上、縷々述べてきたことはどういうことかというと、私の今の仮説としては、かりに研修の講師としての収入を最大化したいのであれば、単価を引き上げようとする価格(price)戦略はおそらく不利だということです。
 テレビに出て講演で儲けている(テレビの出演料は、大物でない限り安いので)という方がいますが、こういう方は単価100万円です。これは、価格戦略以前に、プロモーション(promotion)戦略ですね。
 私の場合は(研修の講師で身をたてようと余り思っていないことも幸いしてか)、内容を良くしたいという努力(product)、あるいはお世話になっている方々やリピートを優先する(place)戦略を結果的にとってきました。これが結果的に、良い方向になっているようにみえます。

 いずれにせよ、制度改定という外部要因もありますから、来年どうなるか、今から楽しみにしているところではあります。それに、そろそろ飽きられるという要素もありますしね。


 今日の研修、休憩時間の合間に、ある経営に関する相談を受けました。やや判断に迷う件でしたが、私だったらこうします、ということを回答しましたが、ご質問いただいた方には相当腑に落ちた様子で、「これだけでも、今日来た甲斐があった」と言っていただけました。こういうことがあると、本当にやりがいを感じます。

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 冒頭の話しに戻ります。

 折角、良い内容を話しておられても、お金の要求が分不相応であれば、その内容すらも偽りに聞こえてくることがあるでしょうし、大変残念なことです(私のように経営について話している場合は、そういう不利はないなあと思ったりしましたが)。
 それだけでなく、結局は、自分にとって何も良いことはないように思います。

 この方には、お金が必要ななんらかの個人的な事情があるのかもしれません。しかし、それにしても、「自分は何を社会に提供しているのか」という観点でも、もう少し見直して頂けると良いなあという感想を持ちました。

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