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2005年7月21日 (木)

<胸部X線>健康診断で廃止検討、有効性に疑問 厚労省

 記事では分かりにくいですが、労働安全衛生法では義務づけが遺っており、結核予防法ではこの4月に廃止されています。
 日本は戦後しばらく結核大国だったこともあり、毎年毎年エックス線検査を受けることが義務づけられていたのですが、それをやめようということ。
 この当たり、記者がどこまで分かって書いているか、あるいは、一般の方がどこまで理解していただいているかですが、検診や予防の世界では、公衆衛生学的(統計学的・医療経済学的)にメリットとデメリットを勘案して、「やる・やめる」を決める必要があります。
 例えば、下の記事では1万人に1人しか結核が見つからない…となっています。一方で、エックス線検査による被爆は極めて小さく無視してよいレベルではありますが、それを何十年も続けているとなると、一定割合でその影響が出てくる確率が生じます。それを比較するということです。
 最近、日本脳炎の予防接種や、インフルエンザの予防接種について、色々ニュースになりますが、基本的にそういうことなのです。予防接種は、大なり小なり副作用が生じます。仮に1000人に一人副作用で死ぬという副作用の極めて強い予防接種があったとしても、予防接種をやらなかった場合に100人に一人死ぬというのであれば、予防接種をやりましょう…ということになるわけです。ここで、副作用で死ぬ確率と予防接種をやらなかった場合を比較することが必要になるわけですし、どちらも「死」という尺度だけで比べられれば良いですが、3日間寝込むとかだったらどうするんだということにもなります。

 これまで、記事にあるように、わが国では、「よさそうだ」ということで、どんどんやってきました。
 これは、相当、無駄・無理がありました。これまでは、何もかもが右肩上がりだったので、「良さそう」で始められたのですが、お金がないこともあり、これからはどんどん見直されていくことでしょう。
 基本的には良いことだと思います。

 しかし、問題なのは、第1に、以前も書きましたが、予防や検診をやめる・やめないを、誰がどうやって判断するかということが、制度上明確になっていないこと。現在は、官僚が思いついて研究を設置して検討するという手順です。やはり、行政の中に常設の検討・監視機関が必要なのと、できれば議会に必要だと思います(アメリカのOTAのイメージ)。また、こういったことを検討できる研究者の層も余り厚くないのは問題かもしれません。

 第2に問題なのは、何か予防・検診をやめることによって、今まで機能していたものを失わせるという問題です。
 抽象的で分かりにくいので具体的に指摘します。例えば、現在、わが国では日本全体で検診車がやってきて検診するという仕組みができあがっていますが、胸部X線検診が廃止されれば、この仕組みが失われる可能性があると思います。医師のX線読映技術に影響を与えるまでのことはないと思いますが、結核に対する意識や診断技術を低める効果はあるかもしれません。

 業界団体の方の「廃止は健診料金の大幅値下げや受診者の急減につながりかねず、死活問題だ」は、余りにも自己中心的で下品な発言です。こういうことを業界団体の理事(天下りかもしれませんが)が言うようでは、全く困ったことです。せめて、「効果をきちんと検討して不要なものはやめていくということにも、業界全体として取り組んでいかざるをえない。しかし、全国どこでも気軽に検診が受けられるという体制に大きく影響を与えかねないし、各事業者の倒産等の影響をどう考えるかという問題もあわせて考えて頂く必要がある」程度は言えないものでしょうか。



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<胸部X線>健康診断で廃止検討、有効性に疑問 厚労省
 胸の病気の早期発見を名目に毎年1回、職場の健康診断で実施されている胸のエックス線検査について、厚生労働省は法的義務付け廃止の検討に入った。検査の有効性を示す証拠がないためだ。すでに専門家による検討会(座長・工藤翔二日本医大教授)を設置しており、結論次第で来年度にも廃止する。しかし廃止で1000億円規模の影響が出るとみられる業界は、検討会で「有効だとの証拠はないが、有効でないとの立証もない」と猛反発。日本医師会の委員も同調しており、最終調整は難航しそうだ。
 エックス線検査は労働安全衛生法の規則が定める職場健診の1項目。同法は72年の施行以来、事業者に対し年1回の実施、労働者には受診を義務付けており、罰則もある。受診対象者は現在、約5900万人に上る。
 結核予防法も年1回の検査を義務付けていたが今年4月に義務は廃止された。見つかる結核患者が受診者1万人に1人未満と少なく、発見の利益よりエックス線被ばくの害が心配されるためだ。
 同省は当初、労働安全衛生法での義務も同時に廃止する考えだった。同省の阿部重一・労働衛生課長は今年1月、業界団体の「全国労働衛生団体連合会」(事務局・東京都港区)の幹部らに「4月から廃止したい」と明言。だが連合会の反対などで4月の廃止を見送り、検討会を設置した。
 検討会では矢野栄二委員(帝京大医学部教授=公衆衛生学)が、職場健診での肺がんの発見率は低く見落としが多い▽他の病気も検査以前に症状が出るなどで健診で探す意義は薄い▽エックス線被ばくの影響で発がんする人が延べ数万回から10万回の受診に1人出ると推計される――と指摘。利益と危険のバランスを考え、義務を廃して特に必要な人だけを検査すべきだと主張している。
 一方、連合会副会長の柚木孝士委員は、検討会に出した資料で「(個々の病気の発見法としては)優れた検査法とする根拠は乏しい」と認めながら「有効性が低いとする根拠は確立されていない」と存続を訴えている。
 職場健診の費用は全国で年間3000億円から4000億円と推定される。連合会の梶川清専務理事は「廃止は健診料金の大幅値下げや受診者の急減につながりかねず、死活問題だ」と言う。
 阿部課長は「従来は、とにかく検査するのは良いことだとやってきたが、今は有効性の証拠が求められる時代だ」と話している。【高木昭午】
(毎日新聞) - 7月17日3時3分更新

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コメント

 行政の無駄の典型でしょう。無駄な被曝、費用、機会。
高額なレントゲン車の購入や維持費用。中止にするべきです。

投稿: | 2016年11月13日 (日) 14時17分

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